想元紳市ブログ

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『心中小説名作選』

昭和の文豪6人による心中小説を集めた1冊。
選者は藤本義一。

冒頭は、川端康成によるわずか2ページの短編『心中』。
逃げた夫から、残された妻子に手紙が届く。
最後の一行で、冷酷な男の姿が見事に別の顔に変わる。
自ら命を絶つ川端自身の最期を暗示しているかのような一編だ。

梶山季之の『那覇心中』は、老婆と青年による実際の事件をモチーフにしている。
読んでいる最中はグロテスクとさえ思える二人の関係から、次第に浮かび上がってくるのは、抗え切れない人間の業である。

そもそも心中には、仏教と結びついた極めて日本的な特質があるという。
例えばアメリカでは、「殺人の被害者がいて、加害者が自殺した」という認識でしか把握されることはないのだとか。

江戸時代には、反社会的行為として「心中」の言葉の使用が禁止され、代わりに「相対死」という別の呼称が与えられた。

巻末の解説は、藤本義一と富岡多恵子の対談。
藤本が女性作家の書いた心中ものがほとんど見当たらないと指摘すると、富岡はこう答える。

「おそらく、女の人というのは心中に限らず書くより実行するからでは」

その他の収録作家は、大岡昇平、司馬遼太郎、田宮虎彦、笹沢左保。


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