想元紳市ブログ

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『息もできない』

レイトショーで韓国映画『息もできない』を観てきた。

一日たった今も、熱に浮かされたような強烈な衝撃は失せることがない。
じわじわとした余波に胸が苦しいほどだ。

ヤン・イクチュンが、監督・脚本・主演をこなし、デビューとは思えない傑作を作ってしまった。
世界中で数々の賞を受賞。
あの文春の映画評ですら、5人のうち4人が5つ星の満点、1人が4つ星というのは極めて珍しい。

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母親と妹の死で、父親を憎しみ続けてきたサンフンは、激しい暴力によって、社会の底辺に生きている。
かたや、ベトナム戦争帰りで痴呆した父親と粗暴な弟の間で、もがき苦しむ女子高生のヨニ。

二人は出会い、現実から逃避するように惹かれあう。
やがて、互いの存在に、ささやかな救いと希望を見い出すが、非情な現実が二人を襲う。

武骨に、刃物のように尖がって進むしかない二人の生き様は、ただひたすら切ない。

父親の自殺未遂に打ちのめされたサンフンは、夜中、川岸にヨニを呼び出す。
ヨニが言う。

「あなたは自分が会いたいときには連絡してくるけれど、私の電話には答えない。そんな人生はだめよ」

サンフンが答える。

「じゃあ、生き方を教えてくれ」

夜の漢江、二人が耐えきれなくなって、初めて嗚咽するシーンでは、一緒になって号泣してしまった。

非常に象徴的なラストシーン。
そこに見るのは、逆らい難い、暴力の連鎖だ。
暴力は、親から子だけでなく、社会の貧困や閉塞感の中で、絶えることなく引き継がれていく。

この映画は、ヤン・イクチュンが私財を投げ打って製作した。
だからこそ生まれた、魂のこもった圧倒的な力に、観る者はただ屈服するのみだ。

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