想元紳市ブログ

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『一条さゆり 濡れた欲情』

園子温、行定勲ら人気監督5人が28年ぶりに新作を発表する日活ロマンポルノ。

先に書いた『(秘)色情めす市場』と並び、誰もが認めるロマンポルノを代表する傑作のひとつが『一条さゆり 濡れた欲情』である。

監督は神代辰巳で、伝説のストリッパー一条さゆりが本人役で出演する。
主な舞台となるのは、大阪野田駅近くに実在した吉野ミュージック劇場。実際、一条の引退興行が行われたストリップ劇場だ。

猥褻物陳列罪で、何度も警察に検挙されながら、毅然と最後の舞台に立つ一条の姿が描かれる一方、事実上の主人公ともいえるのが、伊佐山ひろ子扮する一条に張り合う新人ストリッパーである。

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はすっぱで、しみったれていて、男にだらしない、滑稽極まる女を演じた伊佐山ひろ子が抜群に魅力的。とっかえひっかえ着る安っぽい衣装もぴったりだ。

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表向きはおべんちゃらを並べながら、裏で意地汚く悪口を言いまくる。
とはいえ、せいぜい草履を隠したり、楽屋の鏡に落書きしたり、平気でうそをついたり、といった軽いイタズラ程度で、心根では一条に憧れているのは明らか。
実は、この女も一条の持つもう一つの顔を象徴させた存在だったのかもしれない、とすら思えてくる。

先日、伝記『一条さゆりの真実』を読んだばかりなのだが、公言していた彼女の生い立ちや経歴には嘘が多く、相当の虚言癖の持ち主だったことが暴露されている。

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共演は他に、伊佐山とレズプレイを演じながら反りが合わないストリッパー役に白川和子。また、高橋明や粟津號らロマンポルノに欠かせなかった男優陣が相手役を務めているのも見逃せない。

ちなみに一条は、ストリッパー引退後、間夫に放火されて大火傷を負うなど、波乱の半生を送り、貧困と孤独の中で1997年大阪釜ヶ崎で68年の生涯を終えている。
伝記の著者・加藤詩子は、実際に晩年の白川と交流のあった人物で、並々ならぬ愛情あふれた力作である。

 


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『父と息子の裸祭』

先月の『流刑の島』に続き、旧作の電子書籍化2作目です。

辺境の港町、謎の裸祭りで解き明かされる男たちの秘密……。「海の男シリーズ」三部作の第一弾。
G-men 220号(2014年7月号)に掲載された『夜の海の祭』を改題・加筆修正したものです。

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【あらすじ】

五年ぶりに寂れた故郷の港町に戻ってきた体育教師の佐山明彦。町の成人男性だけが参加を許される年に一度の裸祭りに参加するためだった。日本を代表する荒々しい裸祭りの一つとして知られながら、その中身は神秘のベールに包まれた謎の奇祭……。
初めて参加した明彦は、漁師である父・辰雄の過去、そして男たちの秘密を知ることになる。



NHKの『新日本風土記』が好きで欠かさず視聴しているのですが、しばしば紹介されるのが、昔から継承されてきた各地土着の祭り。

もちろんNHKゆえ深くは掘り下げないものの、多くの祭り、とりわけ男子だけが参加するものや荒々しい裸祭りの根底にはどこか秘密めいた性的な意味合いが込められているのではないか、と想起させられることも度々。

そんな妄想を本作では官能的に膨らませています。

そして、表紙の写真は故郷の小さな漁港。
つまり、本作の舞台となる鬼賀町の風景描写には、18歳まで過ごした故郷の記憶が入り混じっています。

さらに、幼少時に地元で耳にしたある遠縁の話。
若死にした夫の実の弟と再婚した女性。死んだ兄も弟も共に漁師で、子供は最初の夫との間に長男、そして再婚後に次男の二人。
男たちは揃って、町でも評判の男前でした。
今や多くが故人ですが、その話がなぜか未だに心に残っており……。

記憶に残るこの逸話が、形を変えて本作が生まれた、と言ってもいいかもしれません。

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父と息子の裸祭

Digiket↓
[想元ライブラリー] の【父と息子の裸祭】

花村萬月『守宮薄緑』

『守宮薄緑』は、花村萬月がデビューから芥川受受賞に至る数年にかけて発表された初期の短編をまとめたもの。

中にはやや毛色の異なるものもあるが、ほとんどの短編で共通して描かれるのは、性愛を介在させた男女の刹那的でやるせない関係である。
登場する男たちは、ヒモ、小説家、歌舞伎町のチンピラ、作家志望のフリーターなど。
つまり、私小説的色合いが濃いものばかりだ。

とりわけ心を打たれたのが、冒頭に収められた短編『崩漏』。

主人公の加賀は、女を風俗で働かせて金づるとするプロのヒモである。

「一見しただけでブランドがわかる服装やバッグで見栄を張りたがる者は成りあがりの田舎者、あるいはローンかクレジットでしか物を買えない奴隷だ」

プロのヒモたる鋭い洞察は、現代人の表面的な虚飾や仮面をさらりと剥ぎ取る。

加賀は、ある日の銀座で、お金持ちそうな美しい少女・真莉亜に目をつける。
ところが、真莉亜には軽い知的障害があるばかりか、それゆえ悪い男に利用され、ファッションヘルスで働く覚醒剤中毒者だった。

「ふと思った。真莉亜の美しさである。寂しい。しかし寂しいという言葉ではくくれない。なぜ、生きているのだろう、この少女は」

それでも、加賀はなんとか真莉亜を磨き上げ、上玉として高級ソープランドに高く売り込むことに成功する。

同時に、加賀は一途で純粋な真莉亜に内心惹かれつつあることに、おそらく自分でも気づいている。
幼い頃、川遊びの最中に溺死した妹の姿を重ねてしまうのだ。

ところが、加賀の企ては、ある事実が判明してあっさりソープランド勤め初日に頓挫し、多額の借金を背負うはめに……。

追い詰められた2人が、最後にたたずむのは腐敗臭の立ち込める、東京湾埋立地のゴミ集積場である。
頭の弱い真莉亜は加賀を「おにいちゃん」と慕い、無邪気なまま。

「真莉亜はどんなふうに歳をとるだろうか。加賀は薄く閉じた瞼の裏側で年老いた、それなのに幼女のような真莉亜に看取られて死ぬことを想った」

孤独な2人の行く末は深い闇だが、なぜかほのかな優しさと希望が漂うラストが秀逸。


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