想元紳市ブログ

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『特別な一日』

ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが組んだ9作目にあたる、1977年公開の『特別な一日』。

第二次世界大戦前夜の1938年5月8日、ヒトラーがローマのムッソリーニを公式訪問し、盛大なパレードが行われた、イタリアにとって歴史的な一日が、同時に、一組の男女にとって特別な一日となる。

夫と6人の子供たちとのがさつな日常に疲れきった主婦のアントニエッタ。
家族や団地の住民全員が、パレードの沿道応援に行ってしまい、一人留守番のアントニエッタが、同じく一人残っていた隣人の中年男ガブリエレと、ふとしたことがきっかけで知り合う。

思いやりのない夫とは全く違う、柔和でユーモアのあるガブリエレに、アントニエッタは、急激にのめり込むように惹かれていく。

一方、ある理由でラジオ局の職を追われ、ほとんど絶望していたガブリエレも、明るいアントニエッタにつかの間の笑いと安らぎを見出す。

ガブリエレが言う。

「人生は様々な瞬間でつくられている。笑う瞬間も突然やってくる。くしゃみと同じだ」

ガブリエレにとって、アントニエッタはふいに訪れたそんな存在だった。

ともに、人には言えない苦悩と秘密を抱えている。

団地の屋上の洗濯物干し場で、ついに二人は本音を吐き、衝突する。

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ガブリエレは、反ファシスト的思想の持主だったが、職を追われた理由はそれではなかった。
アントニエッタの赤裸々な誘惑を、強張ったまま受け入れない。
なぜなら、彼は同性愛者だったのだ。

しかし、アントニエッタのガブリエレに対する感情も、本物の愛とは思えない。己の劣等感や日常の鬱屈の爆発であり、自分の存在を認めてもらいたいという強烈な渇きである。

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団地内だけの、ほとんど二人芝居であるからこそ、名コンビの味わい深い演技が際立つ。
とりたてて映像美に凝ったわけでもないのに、どのシーンを観ても絵画のように美しいのは、画面の中に二人が放つ確かな存在感があるからだ。

夕方、歓迎パレードを終え、団地の住民や家族が戻ってきたことで、もちろん二人のつかの間の関係も終わる。

ガブリエレの行末を、無言のまま窓から見ている、アントニエッタの表情。
当時40代半ばを迎えていたソフィア・ローレンの、円熟した美しさが圧巻である。


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『スポットライト 世紀のスクープ』

今年のアカデミー作品賞受賞作を劇場にて鑑賞した。

カソリック教会の神父たちによる、児童に対する性的虐待。
教会組織ぐるみの隠ぺい工作とトップである枢機卿の黙認というスキャンダルを暴いた、ボストン・グローブ紙記者たちの苦闘を描く、実話の映画化である。

実際に調査にあたった記者チームは、リーダーのロビー、マイケル、サーシャ、マットの4人。
「スポットライト」とは4人が担当する、調査記事を専門に扱う紙面欄のタイトルだ。

結末が自明のストーリーであるにも関わらず、ひたすら調査の過程を積み上げるだけで、観客にサスペンスあふれる緊迫感を持続させた、監督トム・マッカーシーの手腕は相当のものである。

そればかりか、通常、物語に厚みをもたせるサイドストーリーとなる主要人物たちの家庭事情や個人的背景はほとんど描かれない。

マーク・ラファロ演じるマイケルは別居中、レイチェル・マクアダムス扮するサーシャには夫と祖母がいて、マットは子持ち。
これが判明するすべてである。
一組ぐらいはありそうな色恋沙汰も皆無。つまり、個人の事情は意図的に排除されていると言っていい。

そんな中、たった一つの例外がある。

マイケル・キートン扮するロビーだ。

他の記者たちが、ひたすら執拗に取材を続ける中、かすかな迷いと葛藤を垣間見せるのがロビーである。

そして、自らの過去の過ちを悔いる、きわめて短いワンシーン。
彼の内面の葛藤に気づいているのが、ジョン・スラッテリー扮する、同僚のベンである。

ベンは、ロビーにこんな趣旨のことを言う。

「トンネルの中の真っ暗な道を歩き続けている者は、真実という光が射すまで、歩いている道が間違った道だと気づくことなどできないものだ」

一瞬見えるロビーの抱える闇が、本作を一気に人間味あるドラマに仕立てあげたのだと思う。

監督のトム・マッカーシーは、二作目の『扉をたたく人』が実に味わい深い秀作で好きだった。

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