想元紳市ブログ

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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

今年のアカデミー作品賞受賞作品を、新宿歌舞伎町に出来た新しいシネコンで観た。
本作のA・G・イニャリトゥ監督の『バベル』を、自分は偏愛しているのである。

物語は、簡単に言ってしまえば、一本のブロードウェイの作品が完成する舞台裏を描いたもの。
いわゆるバックステージものだ。

「バードマン」というスーパーヒーローを演じ、かつては人気スターだった俳優のリーガン。
しかしそれ以後はぱっとせず、老いた落ち目で、この芝居に再起をかけている。

リーガンの付き人をしているのは薬物治療中の一人娘サム、急きょ代役で出演することになったスター俳優のマイク、初のブロードウェイに神経過敏な女優のレスリーなど、少々頭のいかれた周囲のせいで、リーガンは様々な苛立ちやトラブルに巻き込まれる。
が、本当はリーガン自身が、とてもまっとうな精神状態ではないのだ。

冒頭からラストまで、全くカットのない長回し風の巧みな編集は、正直、見ていてしばらくは疲れた。
ところが、その落ち着かない感覚に慣れてくると、まるでトリップしたかのような、不思議な精神状態になってくる。
神の目になった気分とでも言おうか。
それどころか、時間、空間、現実と妄想、意識と無意識など、あらゆる境界が、曖昧になっていく。

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リーガンの心のフィルターを通した心象風景を映像化したもの、という見方もできるかもしれない。

非常に実験的作風の難解さは、観る者を選ぶだろう。
しかし、その実験性は、ほとんど芸術の域にまで到達している、と自分は思った。

リーガンの葛藤は、かつて『バットマン』を演じたマイケル・キートン自身のキャリアと重なる。
狂気とギリギリの精神状態で、ほとんど破綻していく様子はあまりに生々しく、なぜ彼に主演男優賞をあげなかったのか、疑問に思う程だ。

台詞中に頻繁に登場するスターの実名など、ウィットと毒の効いた脚本が、日本語字幕では完全に反映しきれていないのが残念である。

 
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