想元紳市ブログ

2014年03月 ≪  123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫ 2014年05月
TOP ≫ ARCHIVE ≫ 2014年04月
ARCHIVE ≫ 2014年04月
      

≪ 前月 |  2014年04月  | 翌月 ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | Comments(-) | Trackbacks(-)

曽野綾子『人間にとって成熟とは何か』

『老いの才覚』に続く、曽野綾子のベストセラー『人間にとって成熟とは何か』を読んだ。

小見出しにはこんなタイトルが並ぶ。

「人生には悪を選んで後悔するおもしろさもある」
「人は年相応に変化する方が美しい」
「おもしろさは困難な中にある」
「報われない努力もある」
「ずたずたの人生を引き受ける覚悟」

昨年夏に発行されたもので、時事的な出来事や具体的な固有名詞を出しながら、容赦なく論破する。

例えば、体外受精で高齢出産した野田聖子議員が、テレビや雑誌でそのことをあれこれ自ら語っている内容について。

「野田氏のように権利を使うことは当然という人ばかりが増えたから、日本の経済は成り立たなくなったのだ。(中略)野田氏は根本的に、人間のあるべき謙虚な視点を失っていて、人間を権利でしか見ない人だということを示している」

最近のお笑い芸人について。

「彼らは自分たちで笑い、自分が笑ったから、それはおかしいことなのだ、と思っているらしいが、何が人生でおかしいことなのかほんとうに理解するには、旺盛な批判精神が要る。本も読まず、教養を身につけようともしない人が、どうして自分や他人を笑いものにできるだろう」

歯に衣着せぬ言い方が、ときに反発を買い、ベストセラーと言いつつも、結構な賛否があるらしい。

自分含め、今の日本、特にメディアの歪で幼稚な傾向を、疎ましく思っている者にとっては、共感できる点が多いと思う。

とりわけ心に響いたのは「人はどのように自分の人生を決めるか」という章だ。

人の一生というものは、最後の最後までわからないとして、こう締めくくる。

「それでも最近の若者たちの多くと私がちがうのは、彼らは人生で大きな失敗の危険を含む冒険を、決してしようとしないのに対して、私はそうではないということだ。私はいつも人生で、自分が好きな道なら、失敗するかもしれない部分を賭けてみようと思っていた。私は失敗してずたずたになる人生を心のどこかで覚悟していたが、彼らにはそんな投やりな点は全くないことが後でわかった」

曽野氏は現在82歳。
大人の正論が正論として通らない今の日本で、まだまだ活躍していただきたい女性の一人である。



スポンサーサイト

『あなたを抱きしめる日まで』

現在公開中のスティーヴン・フリアーズ監督の最新作は、ジュディ・デンチを主役に迎えた、実話の映画化である。

1950年代のアイルランド。
未成年で婚外妊娠したため、カソリックの修道院に強制的に送られたフィロミナ。
そこで男児を出産するも、アメリカに養子売買され、引き離されてしまってから、50年。
一人のジャーナリストの助けを借りながら、生き別れた息子を探すため、渡米する。

息子の消息も、また彼がゲイだったという事実も、思いのほかすんなり判明する。

ゲイだと教えられたときの、フィロミナの反応に心を打たれた。
養子に出される前の、ほんの短い間の息子との触れ合いから、そうなるかもしれないと思っていたと言い、いささかの動揺すら見せないところは、母の強さと偽りのない愛情を感じさせる。

しかし、映画も、フィロミナの旅もそれでは終わらない。
この後に、驚くべき展開が待っており、物語は、より宗教的な意味合いを帯びてくる。

PhilomenaPic09_convert_20160121232638.jpg

同行するジャーナリストのマーティンは無神論者で現実主義者。
一方、フィロミナは修道院での過酷な生活とむごい仕打ちを受けてすら、今も敬虔なカソリック信者であることを捨てようとしない。

映画化に際しては、カソリック教会側から猛烈な反発があったらしいが、物語は単純に当時の修道院の悪行を訴えるものでもない。

ショッキングとも言える事実が明かされる中で、罪とは、赦しとは、といった容易に答えの出ない、重い問いを我々に投げかけてくるのだ。

息子を探す老母という、下手したらステレオタイプになりがちな女性像を、コミカルに、魅力的に演じ切ったジュディ・デンチは、さすが名優の貫録である。

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。