想元紳市ブログ

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『キッズ・オールライト』その2

昨年、劇場で観た『キッズ・オールライト』を再びDVDで鑑賞した。

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レズビアン監督の描く、レズビアンファミリー。

ニックとジュールスという二人のママ、精子バンクを利用してもうけた娘ジョニと息子レイザー。
そして、子供たちが、ママに内緒で探しだした精子提供者の父親ポール。
ジョニは大学進学でまもなく学生寮に入ることになっており、4人で過ごす最後の夏だ。

レズビアンファミリーという特殊な家族の在り方が、まるで当たりまえのように、ごく普通の日常として描かれることの心地よさは、今までのLGBTシネマにはなかったものである。

伝統的な家族というものがいったん解体されて新しい家族の形が生まれる。
しかし、この映画は、それをもう一度破壊してみせる。

ジュールスの不貞によってバラバラになった家族に対し、ジョニが酔っぱらって暴言を吐く。

「今まで完璧なレズビアンファミリーを演じてあげたじゃない」

壊れた家族から見えてくるのは、各々個人の姿である。
そしてどうやら、普通の家族であろうが、ゲイの家族であろうが、本当のところは何ら変わらないということ。

以前、ポールという男に一切の救いがないことを残酷だと書いた。
が、考えてみれば、ここに出てくる人物たちは、皆、それぞれ問題を抱えてぎこちなく、明らかな欠点もある。
とりわけポールの救いのなさには、おそらくレズビアン監督独特の、男性に対する冷やかな視線があることは否めないとしても、人はみな不完全なものだということが、この映画の隠れたテーマなのかもしれない。

物語の終盤、ジョニを車で大学の寮に送る。
部屋に荷物を運び入れ、4人でそれを解こうとすると、ジョニは自分でやるから、しばらく一人にしてほしいと告げる。
いやいや部屋を出ていく3人。
ジョニは段ボールを開け、ベッドメイキングを始めるのだが、少しすると家族の不在が不安になり、慌てて部屋を飛び出して3人を探す。

近くにいると何かと気に障ったり、面倒だったりするけれど、いったんいなくなると、どうしようもなく寂しく、愛おしい家族というものの本質を、さりげなく表現したこのシーンがいい。

ジュールスが、ズバズバと物を言う息子のレイザーを嘆いて言う台詞。

「あなたがゲイだったら、もっと繊細な子だったのに」

母親が息子にこんなことを言えるなんて、なんと進んでいて、幸せなことだろう。



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団鬼六『不貞の季節』

今年最初に読んだ小説は、団鬼六著『不貞の季節』。

昨年亡くなった、SM官能小説の大家である団の、限りなくノンフィクションに近いであろう自伝的私小説を集めた短編集である。
実際、誰もが知る有名人も実名で多数登場する。

以前書いた、同じく自伝的な『最後の愛人』はとても好きな小説である。

収められた4編は、どれも濃密な官能描写を盛り込みながら、哀切と誠実さに満ちた見事な小説ばかりだ。

表題作『不貞の季節』は妻を部下に寝取られた中年男の悲哀。

『美少年』は、大学生の頃、同性愛関係を持った舞踊界の御曹司のことを綴ったもの。
文庫巻末の「若気の至りの稚児趣味と、その無残な結末」と評した解説は、明らかに間違っている。
描かれるのは「若気の至り」などでは決してなく、風変わりだが一瞬の輝きを放ち、また相手に対する優しい想いに溢れた物語なのだ。

SMの深淵と享楽的な大人達を描いた『鹿の園』で引用される、サドの言葉。

「悪徳あって美徳が存在するのである。何も恐れる必要はない。悪もこの自然界のために大いに役立っている事を肝に銘ずべきである」

芸術や創作の本質は、悪徳を見つめることであり、そこに誰も見たことのない光を見出すことではないか、とも思えてくる。

『妖花』は伝説的SM女優・谷ナオミの半生。
団との出会いから、日活ロマンポルノのスター女優に上り詰めて引退、熊本に戻ってから、今は高級クラブのママとして活躍している谷に、団が20年ぶりに再会する物語だ。

「ナオミの運命は下降すると思えば急に上昇の機運をつかみ、たえずジグザグの波型を作っている」

団がそう書く通り、谷の人生は、驚くほど波乱に富んでおり、これだけで一本のドラマチックな長編小説になりそうである。