想元紳市ブログ

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エリザベス・ギルバート『食べて、祈って、恋をして』

エリザベス・ギルバート著『食べて、祈って、恋をして』は、言ってみれば、現代版『アウト・オン・ア・リム』だ。

泥沼の離婚を経験し、さらに絶望的な失恋を経て、鬱病ギリギリの精神状態に陥った著者。
内なるものに導かれて1年の休暇をとり、イタリア、インド、インドネシアで、各4ヶ月を過ごす旅に出る。

必要だったのは「孤独」と向きあうこと。

「孤独でいなさい。孤独を詳しく調べて、孤独の地図を描きなさい。(中略)もう二度と、他人の肉体や感情を自分の満たされない思いの爪研ぎ柱として用いるようなことはしないで」

インドで出会った男性に、失恋の苦痛を打ち明けると、こう言われる。

「真のソウルメートとは、鏡となって、あんたが隠しているものすべてをあんたに見せちまう相手のことだ。あんたの目をあんた自身に向けさせ、人生を変えちまうような相手のことだ。(中略)ソウルメートは、あんたの人生に入り込み、あんたに別の地層が存在することを教え、そして去っていく」

バリ島では、ヒーリング師が言う。

「愛のためにバランスを失うことも、バランスのとれた人生を生きることの一部」

本書はベストセラーになり、ジュリア・ロバーツ主演で映画化された。


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アイザック・B・シンガー『敵、ある愛の物語』

ユダヤ人作家アイザック・B・シンガーの代表作のひとつ『敵、ある愛の物語』。

自分の手元にあるのは、1974年に発行された、改題前の『愛の迷路』である。

ナチの迫害を逃れ、ニューヨークに亡命してきたハーマン。
自分を匿ってくれた元使用人でポーランド人のヤドヴィーガと結婚しながら、自分と同じ境遇のマーシャと不倫を続けている。
そこに、収容所で死んだと思っていた妻タマラが、突然現れる。

三人の女と一人の男。

彼らはみな「生きてもいないけど、死んでもいない」状態。

マーシャは言う。

「生きてることと死ぬことと、そんなに違うかしら? 人間が死ぬのを山ほど見たので、よく知ってるわ」

そのような状態でありながら、信仰を捨てているようで、決して捨てていない。宇宙や、人知を越えた大きな存在に生かされてるのではないか、という仄かな希望がある。

訳者は解説で、「絶望や挫折の美しさ」という言葉を使う。

自分の大好きな一節を引用する。

「ハーマンは、ヘブライ語の母音シーガルの形をした三つの星を見つめた。それらは、おのおの恒星と惑星をひきつれた三つの太陽にちがいなかった。頭蓋骨の中に入っているちっぽけな眼球が、そんなにも遠い物体を知覚しうる不思議さ。頭いっぱいもある脳がひとときも休まずあれこれ思い悩み、いかなる結論にも到達できない不思議さ。神も、星も、死者も、すべて沈黙している。物を言うものたちは、何ひとつ説明しえない」

シンガーはイディッシュ語で小説を書き、1978年にノーベル文学賞を受賞しているが、日本での知名度はいま一つ。
バーブラ・ストライサンドが映画化した『イェントル』の方が有名かもしれない。

本書は、1989年に映画化もされたが、残念ながら、あまりいい出来ではなかったと記憶している。


『クレイジー・ハート』

ジェフ・ブリッジスが今年のアカデミー主演男優賞を受賞した本作。
オリジナルのポスターがかなり渋いのだが、なぜか日本では、やたら甘たるいソフトなものが使用されていて残念。

キャッチコピーもいい。

”The Harder The Life, The Sweeter The Song.”

日本のポスターでは「傷ついた者にしか、歌えない愛がある」。

主人公のバッド・ブレイクは、かつて一世を風靡しつつも、今は歳をとり、落ち目のカントリーシンガー。
4度の結婚に失敗し、たった一人の息子とも絶縁、アル中で、地方を一人行脚し、場末のライブハウスを回る日々だ。
そんな彼が、マギー・ギレンホール演じる子持ちの新聞記者と出会い、立ち直るきっかけをつかんでいく。

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ストーリーそのものは、よくある「再生」の物語である。
だが、ジェフ・ブリッジスの魅力と渋い演技で最後まで飽きさせない。
おまけに、実際の歌唱のセクシーで上手いこと。

落ちぶれた男の弱さ、だらしなさ、情けなさを湛えた、どこまでも人間臭い演技は、確かに主演男優賞に値すると思う。

ブリッジスは、内面に失意を抱えた男の悲哀を演じさせると絶妙の味わいをみせる役者だ。
『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』や『フィッシャー・キング』もしかり。

コリン・ファレルがカントリーの大スター役で登場。

哀愁に満ちた主題歌がすごくいい。

 

アニー・エルノー『シンプルな情熱』

母国フランスのみならず、世界中でベストセラーになった本書。

「昨年の九月以降、私は、ある男性を待つこと ― 彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外、何ひとつしなくなった」

彼と過ごす時間に備えて、酒や果物を買い揃える。
ブティックに入っても彼が気にいるであろう洋服を探す。
彼からの電話のベルが聞こえなくなるのを心配して掃除機やヘアドライヤーを使うのを控える。

妻子ある東欧の外交官と1年にわたる情事を続けた女の赤裸々な告白、というと、女性週刊誌によくあるナルシシズム満載の告白小説のようだが、中身はむしろ対極。

恋愛という情熱にとりつかれたときの心の動きが、まるで精密な機械を一個一個の部品に分解するように、微細に描写される。

「ここでおこなう事実の列挙と記述の内には、アイロニーも自嘲もない。アイロニーや自嘲は、ある物事が自分にとって過去のものとなってしまってから、それを他人たちや自分自身に語るときの方法であって、その物事を体験している最中には用をなさない」

「私には、形容詞一個の位置を変えるよりも、現実からもたらされることになったものを付け加えることのほうが重要だと思える」

本書を絶賛している山田詠美の言葉。
「医師が感情というものの処方箋を作ったらこうなるというくらい、正確な書き方だ」

著者は、モデルとなった男性と別れてから2カ月後にこれを書き始めたのだという。

おそらく、書くという作業によって彼女は前に進み、囚われの身から自分自身を解放することができたはずである。

『小さな中国のお針子』

文化大革命の嵐が吹き荒れる1971年の中国。
反革命分子の子弟として、山奥の村で再教育を受けることになった二人の青年と、村でお針子をしている少女。

青年が読んでくれる西洋文学に触れるうち、少女は自我に目覚め、さらには恋とその痛みを経て、自らの意志で人生を切り開こうと村を出る。

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少女は、ことさらバルザックを好んだ。

「自然人には感情しかないが、文明人には観念がある」

一人山を下りる少女は、髪を切り、追ってきた青年を振り払う。

しかし、観念を知った少女のその後が幸せになったのかは、定かではない。
それぞれ成功を手にした二人の青年の20数年後は、はっきり描写されるというのに。

都市と農村、富裕と貧困、それはそのまま中国社会を紐解く、最も重要なキーワードである。

青年の一人が、『藍宇』に主演したリウ・イエ。
この役柄も、まるで藍宇のイメージそのままなのは、ナイーブな優しさが、おそらくリウ・イエ個人が備えた生来のものだからだろう。


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