想元紳市ブログ

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『友へ チング』

韓国映画の『友へ チング』。

ゴールデンウィークに初めて訪ねた釜山を舞台にしているので、もう一度観たいと思っていた。
釜山は、どことなく郷愁を感じさせる港町だった。

実際、映画に出てくる街並みも、温もりのある懐かしさが漂う。
描かれるのは、幼なじみの少年4人の強い絆と友情だ。
中心になるのが、のちに極道の世界に身を投じることになる二人である。

うちの一人、チャン・ドンゴンはひときわ強烈な魅力を放つ。
色気のある、骨太の男らしさを、日本人の若手俳優に見つけるのは難しい。
惜しむらくは、4人がどうしても高校生には見えないこと。

韓国版『スタンド・バイ・ミー』とか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などとも言われるらしいが、監督は間違いなく後者を意識しているはずである。
エンニオ・モリコーネ風の抒情的なテーマ曲、子供たちが走る場面をスローモーションで追うところなど、まるでセルジオ・レオーネに捧げたオマージュのようだ。
水しぶきの一粒一粒が見えるような、陰影の強いカメラワークもノスタルジーを誘う。

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高校の学芸会のシーン、舞台で演奏する女子高生バンド「レインボー」の歌うポップスが不思議と味がある。

小悪魔のような魅力を持つ、ボーカルの女の子が、まるで『リング』の貞子のように舞台に登場して歌う。
しかし、彼女、この後、4人のうちのひとりと深く関わり、あまり幸せとは言えない人生を送ることになるのである。

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『後悔なんてしない』

最近、知人に何本かゲイシネマを教えてあげたところ、韓国映画の本作が一番よかったそう。
なんでも、数日、仕事が手につかなくなったらしい。

田舎の孤児院からソウルに出てきたスミンと、大会社の御曹司ジェミンのラブストーリーである。

あまりに古典的過ぎる設定とベタなストーリー展開も、洗練された音楽と映像、ソウルの都会的な空気が溶け合ったセンチメンタルな雰囲気が、思いのほかしみじみとした味わいを生んでいる。

二人は、偶然出会い、かみ合わないまま再会し、それでも拒絶し、やがて恋に落ちるが、当然、乗り越えられない現実に直面する。

スミンは事あるごとに繰り返す。

「僕たちの関係はいったい何なの?」

この言葉は、多くのゲイにとって特別な思いを想起させる。

どんなに深く長い関係を築いても、結婚や社会的な認知とほど遠い二人は、明日には別れの危うさと儚さがつきまとう。
誰でも過去一度や二度は、己や相手に問いかけたことがあるはずだ。

結末はハッピーエンドである。
車の中で、ジェミンがスミンの股間に手をあてるシーンで、映画は終わる。
それは、以前、愛を受け入れたスミンがジェミンの股間を握ったシーンと重なる。

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哀切に満ちた、美しいシーンがいくつかあった。

二人が、ジェミンのオフィスでダンスする様子が遠景になり、ソウルの夜景に溶けていくシーン。

夜の漢江を渡る橋の上を車で走りながら、友人の遺灰をまくシーン。

本作の他、中国の『藍宇』、台湾の『花蓮の夏』など、アジアの他の国では生まれた、真正面から向き合ったゲイ映画が、日本映画には一本も見当たらないのが残念である。

 

『ピカソを捨てた花の女』

今日のNHK日曜美術館は『ピカソを捨てた花の女』。
ピカソが愛した数多くの女性の中で唯一、今も存命している女性画家、フランソワーズ・ジローのことだ。

88歳とは思えない美しい容姿と毅然とした語り口は、波乱に富んだ生涯を生き抜いてきた証だろう。

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40歳離れたピカソと出会い、二人の子をもうけるが、10年の関係の後、ピカソの元を去る決心をする。
「ピカソを完璧に理解したからだ」というのが理由。
ピカソは、自分の元を離れたら砂漠の生活が待っている、と引きとめるが彼女は意志を曲げなかった。

2年後、ジローが若い画家と恋に落ち、結婚したことを知ったピカソは、激しい嫉妬あらわに復讐を仕掛ける。二人の子供を理由に復縁を迫る。
ところが、ジローが離婚するやいなや、手のひらを返したようにピカソは別の女性と結婚してしまうのだ。

この絶望の期間に、ジローは自身の代表作をいくつか生み出した。

インタビューでこう答えている。

「ピカソが言った砂漠なんてものは全くなかった」

ピカソと別れて10年後、今度は、ジローが反撃する。
ピカソとの生活、プライベートを暴露した本を出版するのだ。
もちろんピカソはさまざまな手を使って妨害するが、世界中で出版されることになる。

ジロー以外の多くの女性が、ピカソの死後自殺したり、精神に異常をきたしたりして、人生を狂わせてしまう中、今も美しく生きているフランソワーズ・ジロー。

振りかえってみると、ジローと過ごした10年は、ピカソがもっとも穏やかだった時期にあたるそう。

ピカソが描いたジローの肖像画は、まるで植物のようなひ弱さを呈している。
しかし、実はジローこそが、ピカソを裏で支えていたのではないのか。
ジローのインタビューを聞き、今の毅然とした姿を見ると、そう思わざるをえない。

『レイチェルの結婚』

この映画の重苦しさは、好き嫌いがはっきり分かれそうだ。

姉の結婚式に出席するため、麻薬中毒の更生施設から退院してきたキム。
両親は離婚し、それぞれ再婚している。
結婚する姉も、妹のことや両親の愛情のことで、屈折した感情を抱えている。
花婿と花嫁の友人ですら、何やら、暗い陰を呈している。

つまり、ここに出てくる人はみなが、病んだものを心の奥底に抱えて生きている。

結婚式を挟んだ数日、家族はそれぞれ、ぶつかり、労りあい、拒絶し、受容し、を繰り返す。
縺れた感情の中心にあるのは、歳の離れた弟、イーサンの事故死である。
そして、その死に、どうやらキムが絡んでいるという事実。

キムを演じたアン・ハサウェイはまさに新境地の演技だ。

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ホームビデオのように撮影された映像は、ときにピントがずれ、ブレて画面が揺れ、無駄に動き、観る者に不安感をあおる。

長々と続く、ディシュウォッシャーにいかにうまく汚れた皿を並べるかを競うシーン。
食器のぶつかる金属音が、観ているだけで、神経を逆なでする。

花嫁の婚約者が黒人であること、父親の再婚相手も黒人系であること、インド風のエスニックな結婚式など、それらは、どことなく落ち着かない違和感を想起させる。

母親を演じたデブラ・ウィンガーの存在感は、やはり圧巻である。
特に感情をむき出しにした、キムとの衝突は本作の最大の見せ場だ。

そうした中、ひときわ際立ってくるのは、父親の弱さである。

娘の喧嘩を前に、子供のように泣く父親。
罵りあい、衝突する姉妹に比べ、父親は返す言葉すら持ち合わせていないのだ。

実際、自殺を試みるキムより、死に最も近いのは父親ではないかとも思える。

花嫁の結婚式でのスピーチ。

「父親は教えてくれた。人生の幸福をはかる基準は、どれだけ愛されるかではなく、どれだけ愛せるかだと」

物語が終盤を迎えても、家族の苦悩に出口が見えないのは辛い。


『息もできない』

レイトショーで韓国映画『息もできない』を観てきた。

一日たった今も、熱に浮かされたような強烈な衝撃は失せることがない。
じわじわとした余波に胸が苦しいほどだ。

ヤン・イクチュンが、監督・脚本・主演をこなし、デビューとは思えない傑作を作ってしまった。
世界中で数々の賞を受賞。
あの文春の映画評ですら、5人のうち4人が5つ星の満点、1人が4つ星というのは極めて珍しい。

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母親と妹の死で、父親を憎しみ続けてきたサンフンは、激しい暴力によって、社会の底辺に生きている。
かたや、ベトナム戦争帰りで痴呆した父親と粗暴な弟の間で、もがき苦しむ女子高生のヨニ。

二人は出会い、現実から逃避するように惹かれあう。
やがて、互いの存在に、ささやかな救いと希望を見い出すが、非情な現実が二人を襲う。

武骨に、刃物のように尖がって進むしかない二人の生き様は、ただひたすら切ない。

父親の自殺未遂に打ちのめされたサンフンは、夜中、川岸にヨニを呼び出す。
ヨニが言う。

「あなたは自分が会いたいときには連絡してくるけれど、私の電話には答えない。そんな人生はだめよ」

サンフンが答える。

「じゃあ、生き方を教えてくれ」

夜の漢江、二人が耐えきれなくなって、初めて嗚咽するシーンでは、一緒になって号泣してしまった。

非常に象徴的なラストシーン。
そこに見るのは、逆らい難い、暴力の連鎖だ。
暴力は、親から子だけでなく、社会の貧困や閉塞感の中で、絶えることなく引き継がれていく。

この映画は、ヤン・イクチュンが私財を投げ打って製作した。
だからこそ生まれた、魂のこもった圧倒的な力に、観る者はただ屈服するのみだ。

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